映画「BLAME!」感想と考察 弐瓶勉氏はどこまで未来を見ているのか



先日5月20日に公開となった映画「BLAME!」の記事です!
新宿ピカデリーまで見に行ってきたのですが、公開間もなかったこともあってか平日の昼だったにも関わらずほぼ満員。
結構マニアックなSF作品なので、お客さんは大半が年齢層高めの男性でしたが、若いカップルなどもいて結構幅広い方に愛されているんだなぁと思いました。

で、ずばりこの映画がどうだったかと言うと……。

面白かったです!

原作未読の上、前情報ほぼまったくなしの状態で見に行ったのですが、かなり特異な設定を持つSF作品であるにも関わらず2時間弱の映画として非常にすっきりまとめられていました。
映画を見終わったあと、うしろにいたカップルも「上手くまとめてたね」「原作を読んでいたら逆にわからなくなる」みたいなことを言っていましたね。

それではまずはあらすじです!
(今回考察っぽいことはあまりしていないので、映画を見た人向けのおさらい記事としてご覧ください!)


※以下ネタバレが含まれます、ご注意ください!


■あらすじ
はるか未来。人類は、進化し増殖した都市によって駆除される存在になっていた。
電基漁師である少女づるは、食料である“どろどろ”を調達するため、仲間たちと共に階層都市を探索していた。
大人たちには止められていたものの、勝手に装備を持ち出して村の外に出たづるたち。
村の食料が尽きかけており、このままでは数か月もしないうちに全員が餓死してしまうがゆえの決断だった。
都市の監視塔に見つからないよう慎重に進んでいく一同。
なんとかどろどろが流れていた管を見つけるが、すでに枯れ果ててしまっていた。
その時、づるたちは監視塔に見つかってしまう。
監視塔が放った雷から生まれたのは、都市を守るセーフガードのうち“駆除系”と呼ばれるロボットだった。
づるたちは銛を放つライフルで応戦するが、駆除系の人知を超えた機動力に圧倒され、仲間たちが次々と殺されていく。
づるも複数の駆除系に追い詰められるが、その時、突如黒い服の青年が現れた。
青年はゆっくりと手に持った銃のようなものを向ける。
づるが隙間に飛び込むと同時に、青年は引き金を引いた。
放たれた極大の光線は、駆除系の硬い装甲を削り取り、大きな爆発を起こした。
づるの「あなたは何者」という問いに対し、青年は霧亥(キリイ)と名乗る。
霧亥の持つ装置によって、監視塔はづるたちを検知しなくなっていた。
これにより霧亥の「目が見たい」という要望に応え、づるたちはヘルメットを外す。
霧亥はづるたちの目をスキャンした上で、「ネット端末遺伝子を持つ人間はいないか」と尋ねた。
づるたちはその単語すら聞いたことがなかったが、「大人たちなら知っているかも」と村に来ることを提案する。

霧亥を村に連れ帰ってきたづるたち。
村には結界というものがあり、セーフガードは村には入れないと語るづる。
人間そっくりのセーフガードもいることから、当初は霧亥を疑っていた村の人々。
しかし霧亥が食料を提供したことで、その疑いは晴れた。
霧亥はおやっさんにネット端末遺伝子のことを話す。
その遺伝子があれば都市に接続することができ、人類によって都市をコントロールできるようになるという。
村の若頭である捨造はその話に懐疑的だったが、おやっさんはネット端末遺伝子のことを以前聞いていたことを思い出した。
おやっさんから村の下にある腐れ祠の話を聞き、すぐに向かう霧亥。づるたちもそのあとを追った。
“腐れ祠には幽霊がいる”という噂があり、実際そこには奇妙なホログラムが。
尻込みするづるたちを他所に霧亥は進んでいき、瓦礫の下から一体のロボットを見つけ出す。
力技で正常に起動させると、胴体と頭しかないそのロボットが喋り出した。
ロボットは「科学者のシボ」と名乗り、その場にあったソケットを使って実験をするために塗布防電=結界を張り、偽装端末を使って都市にアクセスを試みたことを語る。
結果それは失敗に終わったが、その際の反省を活かせば都市にアクセスすることが可能だという。
偽装端末を作り出すため、自動工場へ向かうことを提案するシボ。
自動工場では食料すらいくらでも作ることができるのだという。
村の食糧難をなんとかするためにも、村の電基漁師は一縷の望みをかけて自動工場へと同行することを決めた。

霧亥とシボのおかげで監視塔に発見されることなく、自動工場に辿り着くことに成功する。
早速シボが工場の設備を使い、大量の食料を確保。その後偽装端末もすぐに作成する。
だが、シボが工場の設備を使ったことによって駆除系が発生。
霧亥が偽装端末を持ち、づるたちは迎撃しながら後退する。その最中、シボは駆除系によって破壊されてしまった。
駆除系の猛攻に、次々とやられていく仲間たち。
づるは離れ離れになってしまった友人のタエを心配するが、タエと一緒に行動していた仲間から「駆除系に潰されちまった」という話を聞き、単独でタエのいる方へ向かう。
すると、タエは腕を折られてはいたが無事だった。

合流した後、さらに後退を続ける一同。しかし銛の残りも少なくなり、絶体絶命の危機に。
しかしその時、突然光線が走ったかと思うと、その光の線で駆除系が止まった。
「助けに来たわよ」と現れたのは、破壊されたかに思われたシボだった。
シボは自動工場の設備を使い、新たに作った義体に乗り移っていた。
駆除系が立ち往生している間に、輸送車両に乗り込む一同。シボが急いで動作させ出発するが、何体かの駆除系が車両に取りついてしまっていた。
銛を打ち込み応戦するも、駆除系の数は思ったより多い。
その時、それまで戦いに参加していなかった霧亥が、首になにかを打ち込む。
そして霧亥の持つ銃、重力子放射線射出装置の引き金を引いた。
その圧倒的な破壊力で、駆除系を薙ぎ払う霧亥。しかし霧亥は、それによってエネルギーを使い果たし、休眠状態へ入ってしまった。

なんとか村へ帰ってきたづるたち。
大量の食料を確保できたことから、長らくできていなかった死者を弔う宴を行う。
一方シボは充電が済んだ霧亥を起こし、都市にアクセスする実験を行うため腐れ祠へ向かった。
しかしその時、突如放たれた銛が塗布防電装置を破壊する。これにより、監視塔に村を発見されてしまう。
塗布防電装置を破壊したのは、づるの友人であるタエ――正確には、タエの姿をしたセーフガードだった。
上位セーフガードであるサナカンは、タエの情報を丸々コピーした上で、すでにタエを殺害していた。
シボは急いで都市へのアクセスを開始していたが、サナカンに発見され、義体は攻撃を受けてしまう。

サナカンは村人たちを違法居住者として処理し始める。その圧倒的な火力に、成す術はなかった。
さらに監視塔により大量の駆除系が発生、村を襲い始める。
霧亥は重量子放射線射出装置で監視塔を破壊した後、サナカンを止めるために攻撃をしかけた。
激闘の末、霧亥は片腕を落とされた上、下層へと落下してしまう。
サナカンに追い詰められ、もうダメかと思われたその時。
づるが霧亥の重力子放射線射出装置を投げ渡し、三倍のエネルギーで放った重力子放射線により、サナカンの撃破に成功する。

生存者たちが集まり、治療を施していると、やられたと思われたシボが腕だけになって登場。
「私の脳は腕にあるのよ」とのこと。
シボはシステムと交渉し、都市の監視が及ばない区画を発見。一同はそこへ移住することに。

昇降機でその区画へ下りようとした時、巨大なセーフガードが出現。
霧亥は監視塔の監視をかいくぐれる装置(?)をづるに渡し、「ネット端末遺伝子を持つ人間を探す」と言ってその場に残ったのだった。

づるたちは安全な場所へ移住し、子孫を繁栄させた。
づるの孫は霧亥の話を聞かされて育ち、霧亥が今もどこかでネット端末遺伝子を持つ人間を探していることを期待して生きていく。


■構造解析
この映画、色々な意味で本当に映画館に見に行くべきです!
頑張ってあらすじに起こしてみましたが、これは文字に起こすと逆にわかりづらいかもしれないです。絶対に映像で見た方がいいですよ。
他にも理由はいくつかあります。

1.とにかく音響が凄い

この映画の凄さは音響にあります。音響と一口に言っても色々あるんです。
まずは声優さんの豪華さですよね。シドニアの騎士でもおなじみの弐瓶勉ファミリー(櫻井孝宏さん、洲崎綾さん、佐倉綾音さん)や、売れっ子声優雨宮天さんや宮野真守さんなどなど、アニメファンなら一度は声を聞いたことがあるであろうキャストがいっぱいです。
冒頭キャラの顔が見えず、声だけで判断しなければいけないのですが、声優ファンなら2倍楽しめると思います。
そして特筆すべきが音楽やサウンドエフェクトですよ!
自分はフィリップ・K・ディック原作の映画のような“情緒のあるSF”が大好きなのですが、今作も音楽が良い仕事をしていて、近いものを感じました。
で、本題はサウンドエフェクトです。音がすんごいんですわこれが。
冒頭の駆除系との戦闘では、駆除系の発する「キィィイ」っていう耳障りな音や、重力子放射線射出装置の腹に響く低音など、劇場の音響設備でなければ体感できない素晴らしい音作りでした。(ちなみにシドニアも音響凄いですよね)
立川では爆音上演をやっているらしいんですけど、耳が壊れちゃわないか心配なほどです……。

2.弐瓶勉作品でしか見られない世界

弐瓶勉さんの作品と言えば、その独特な世界観が大きな魅力の一つですよね。
今作も“都市が勝手に増殖を始め、人間か駆除される存在となった世界”という「なにを食べて育ったらこんなことが思いつけるんだ?」と問いたくなるほどの独創的な設定が使われています。
それだけならまだしも、その独特な世界観をアニメーションで表現しきっているのが凄い。
づるたちが都市を進んでいく際にも、巨大なロボットが突然建築をし始めたり、超広大な空間があったりと、印象的なシーンが沢山ありました。
Netflix等でも見られるみたいなんですが、劇場の巨大なスクリーンで見た時の没入感は味わえないと思います……。

3.魅力的なキャラクターたち

そしてなんと言っても、キャラクターがみんな魅力的なこと。
霧亥の登場シーンはめちゃくちゃかっこ良かったですし、シボの絶対なんとかしてくれる安心感や、サナカン(CV早見沙織さん)の無慈悲な殲滅シーンなど、本当に必見ですよ。
どのキャラも本当に魅力的だったのですが、やっぱり個人的に一番好きなのは霧亥です。
今作も弐瓶さんらしく、一番知りたいところは教えてくれないんですよね。
霧亥は果たしてどこでどうやって生まれ、あのあとどうなったのか……。
個人的には映画第二弾とかやってくれても全然いいんですよってくらい気になってます!


■まとめ
総合的に見て、非常に優れたSF映画だと思いました!
普段SFに親しみのない方でも、見れば「おっ」と思うのではないでしょうか。
話も一か所トリックがあるだけで、独特な世界観を除けばかなりシンプルですしね。

後ろにいたカップル曰く「映画から入った人は漫画読まない方がいいかも」とのことですが、そう言われると読みたくなっちゃいますよね!
そのうち大人買いして読んでみようと思います!

というわけで、久々の映画記事でしたー! サラダバー!

スポンサーリンク

映画「ベイマックス」新時代のエンターテイメントの模範的脚本

本日紹介する作品は映画「ベイマックス」です!
金曜ロードショーでやっていたのでなんとなく見ていたのですが、いや凄いですね。
娯楽映画として一部の隙もないレベルのパーフェクトな脚本だと自分は思いました。

盛り上がり曲線はこうです。
ベイマックス曲線 
よくある右肩上がりな曲線ではあるのですが、この映画は盛り上がり曲線だけで判断することはできません。
あらすじを踏まえて、順を追って語ってみます。

※以下ネタバレにご注意ください。


■あらすじ
天才的な科学の才能を持った少年ヒロ・ハマダは、兄であるタダシに連れられて大学へ行く。
ヒロは大学で、タダシの仲間たちの発明や、タダシが発明したケアロボット“ベイマックス”を目にする。
ベイマックスは様々な医療機能を搭載しており、人の傷や痛みをスキャンして治療することができる。
「ベイマックス、もう大丈夫だよ」と言うまで対象から離れることができない。

様々な発明に刺激された上、尊敬する科学者キャラハン教授とも出会い、ヒロは飛び級で大学進学を決意した。
キャラハン教授に認めてもらうため、タダシは“マイクロボット”という群れで自由自在に行動させることができるロボットを開発し、発表。大絶賛され、キャラハン教授に大学進学の許可を貰う。

しかしその発表後、会場で火災が発生。
教授を助けに行ったタダシも巻き込まれ、命を落とすことに。

失意のヒロだったが、不意にベイマックスを起動させる。
ベイマックスは傷ついたヒロを治療するため、マイクロボットの反応を頼りに街を探索し始めてしまう。
それを追ったヒロが見つけたのは、火事でほとんどが消失したはずの“マイクロボット”を大量生産している工場だった。
そこでヒロはそのマイクロボットたちを操る仮面の男に襲われるも、辛くもその場を脱する。

ヒロは研究発表会での火災を“マイクロボットを狙った作為的なもの”だと考え、ベイマックスを強化して仮面の男を倒そうとする。
タダシの大学の仲間たちを集めて、ベイマックスのセンサーで見つけた孤島の研究施設へと乗り込む。
しかし研究施設はもぬけの殻だった。
残された映像からわかったのは、実業家クレイがテレポーテーションの実験をしており、失敗したこと。そしてその際に、研究員の一人が行方不明になってしまっていたということだった。
そこに現れる仮面の男。
ベイマックスとヒロの活躍によって、仮面の男の正体が死んだと思われていたキャラハン教授だったということが発覚する。
テレポーテーションの実験で行方不明になっていたのはキャラハン教授の娘であり、教授はクレイへの復讐のためにマイクロボットを使っていたのだった。
さらに火災は本当にただの火災で、キャラハン教授はマイクロボットを使って生き残っており、助けに行ったタダシの行動は「余計なこと」だと言われ激昂するヒロ。
キャラハン教授を殺そうとベイマックスを暴走させるが、仲間たちによって止められた。

ヒロは一人ラボへと戻り、故障したベイマックスを修理しようとする。
その際に、ベイマックスの記憶領域に残っていたタダシの映像が再生され、ベイマックスが「人の役に立ってほしい」というタダシの強い思いから生まれたことを知り、心を改めた。

クレイへの復讐のため、大学を襲うキャラハン教授。
テレポーターを大学の上空で起動させ、大学ごと異次元へと放り込もうとする。
そこに、ヒロやベイマックスたちが駆けつける。
最初の戦闘では役に立たなかった仲間たちも、ヒロのアドバイスで大活躍。
辛くもキャラハン教授に勝利した。

しかしベイマックスが、「テレポーターの中に生命反応がある」と言い出し、ヒロとベイマックスはキャラハン教授の娘の救出へ向かう。
ポッドを発見し出口を目指す二人だったが、巨大な瓦礫が飛来し、ベイマックスが盾になる。
その時の衝撃で、ベイマックスのブースターが壊れてしまう。
ベイマックスはヒロとポッドを元の世界へ返すため、ロケットパンチを使うことを提案。
それではベイマックスが戻れないと涙するヒロだったが、最終的に「ベイマックス、もう大丈夫だよ」と言ってヒロとポッドのみが元の世界へと押し戻された。

後日。ヒロはロケットパンチに使われたベイマックスの手の中に、メモリーが残されていたことに気づく。

■構造解析
うろ覚えなのであらすじの時系列が前後していたらすいません!
しかしこの映画、文字で見ただけでは絶対にもったいないです。
日本とはまったく違う方向性で進化を遂げたディズニー映画ですが、やはりその進化の頂点にある映像美は素晴らしかった。
特にヒロがベイマックスに乗って飛び回るシーンの背景は実写以上とも言うべき美しさでした。
と、映像に対する賛辞はここまでにして、ストーリーのどこがポイントなのかを確認します。

1.容赦なく主人公に悲劇を与える

これは創作論では常々言われていることなのですが、主人公をいじめることは非常に大事です。
なぜなら主人公を一度落とさなければ、盛り上がり曲線は大きく上昇しないからですね。
今作では兄の死というかなりきつい悲劇がありますが、そこからの主人公の成長ぶりは見た人ならおわかりでしょう。

2.非常に論理的な主人公

この手の話によくある展開として、
兄の死→落ち込む主人公→ベイマックスのフォロー→「ほっといてくれよ!」→仲直り
みたいなのありますよね?
しかしこの主人公、ベイマックスがしつこく医療行為をしようとしても、優しくいなせるのです。
上のような展開はありがちすぎて、最早時代遅れなのかもしれませんね。
そんな主人公も終盤では怒りを露にしますが、そのシーンが際立って見える効果もあったでしょう。

3.キャラハン教授がボスというミステリー的驚き

見た人ならわかると思いますが、「ボスはクレイだろう」と思っちゃいますよね。
自分はミステリー好きですがアホなので、仮面の男の予想クイズに「ハハッ、なんてサービス問題」と思ってすらいました\(^o^)/
なんとか途中で「待てよ?」と思えましたが、あれはもっとアホだった子供の時に見たら見事にひっかかったでしょうね……。
やはりミステリー要素は面白いものです!

4.冒頭の台詞の使い方と、心に傷を残さないベイマックス設計

「ベイマックス、もう大丈夫だよ」の使い方は王道でしたが感動的でしたね。
ただそれだけで終わらないのがこの映画の「お客さんのことを考えまくっている」点でしょう。
ベイマックスはちゃんと復活するのです。
お客さんの心に傷を残さない、まさにベイマックス設計な映画でしたね。
家族で安心して見られる、非常に金曜ロードショー向けな作品だと思いました。

■まとめ
ディズニーやハリウッドなど、アメリカ発の映画はとにかく物語に安定感があります。
なぜかと言うと、おそらく様々な人種の人がアメリカにはいるからなんですね。
文化も宗教も様々なアメリカという国でヒット作を生むには、本当の意味で万人受けを目指さなければいけません。
そのため脚本に非常に力が入っており、アメリカの外に出てもヒットするのでしょう。

自分も小説を書いていて思うのですが、必然性というのは非常に大事です。
重要なのはいかにそれが物語ということを意識させないこと、つまり自然な流れを作ることなんでしょうね。
それができて初めて、お客さんが物語に没入できる“プロの仕事”と呼べるものになるのでしょう。
本当に勉強になります(活かせるとは言っていない)。

1月は金曜ロードショーでジブリ祭りらしいので、こちらも解析したいと思います!
それではサラダバー!

映画「Once ダブリンの街角で」クリスマスということで恋愛映画でも!

本日紹介する作品は映画「Once ダブリンの街角で」です!

「え、なにそれ?」と思われる方もいるかもしれませんね。
あまり大々的に宣伝されなかったので、知らない方も多いと思います。
とりあえずPVをご覧ください。


アイルランドで極めて低予算で制作された映画にも関わらず、アメリカや日本にも配給され、その楽曲はアカデミー賞を受賞したりグラミー賞にノミネートされたりしました。
そう、この映画はほぼ音楽映画です。とにかく挿入歌が素晴らしい。
ですが当然ストーリーにも魅力がありますので、解析してみましょう。


※以下ネタバレが含まれます、ご注意ください。


■おおまかなあらすじ
アイルランドの首都ダブリンで、ストリートミュージシャンとして活動する30代の“男”。
熱い歌とギターを披露するも、足を止めてくれる人は少なかった。
そんなある日、チェコからやってきた花売りの“女”が男の歌に興味を示し、話しかけてきた。
男が実家の掃除機修理の仕事を手伝っていることを知ると、壊れた掃除機を見て欲しいと頼み込む。

次の日、女は掃除機をそのまま引きずって街を歩いてきた。
軽く食事をしながら会話をする二人。女は自身もピアノや歌をやっていることを明かす。
それを聞いた男は一緒に楽器屋に行き、女と一緒に即興でのセッションをする。
男が「レコーディングを手伝ってくれないか」と頼むと、女はそれを快諾した。

その後、男は長年交際していた彼女が出ていってしまったこと、女は夫と別居していることをお互いに知り、親密になっていく。
男の父親のバイクで海を見に行った時、男が「夫を愛しているか」と聞くと、女はチェコ語でなにかを言った。
男はなんと言ったのかたずねたが、女ははにかんで答えなかった。

男と女、さらに3人のストリートミュージシャンを加えて、スタジオでのレコーディングが始まる。
当初は寄せ集めのバンドにいまいち乗り気でないスタッフだったが、その素晴らしい演奏に態度を一変、やる気を見せ始める。
一晩中続いたレコーディングが終わり、カーステレオでの音質チェックを兼ねて海へ行く一同。
デモテープが完成し、男が女を家まで送ると、女は「別居していた夫がダブリンに来て同居することになった」と告げる。
男はロンドンに行くことを決めていたため、「最後の夜は一緒に過ごしたい」と言う。
女は「なにか間違いが起きてしまうかもしれない」と言って一度断るも、最終的には受け入れた。

しかし女はその約束をすっぽかしてしまう。
男は出発の前に女を探すが、見つけることができなかった。

空港に行く前に、男は女のためにチェコ製のピアノを購入し、女の家に届けるよう伝える。
男はロンドンへ出発し、二人は別々の道を歩むことになる。

■構造解析
どうですこのほろ苦い話……。
とても濃い時間を過ごした二人ですが、最終的に結ばれることはないんですね。
特に大きな山場のないストーリーではあるのですが、非常に印象的な演出がされているのでいくつか紹介します。

1.シュールな冒頭でのつかみ

自分は当初、この映画を甘ったるい恋愛映画だろうと予想して見始めました。
しかし冒頭、ストリートミュージシャンの男が投げ銭の入ったギターケースを盗まれて全力疾走で追いかけるシーンや、女が掃除機をゴロゴロ引きずりながら街を歩くシーンでかなり笑いました。
やはり“笑える”というのは重要な要素で、「まあまあそんなに緊張しないで、気軽に見てってよ」という作品に対する無駄に肩に力の入った先入観を解きほぐす効果があるのでしょう。

2.女がチェコ語で言った言葉

劇中で女が男にチェコ語で言った言葉。
後に調べてわかったのですが、「夫を愛しているか」という質問に対して「あなたを愛している」と言っているのです。
複雑ですよね……多分気持ちとしては、男を好きになっていたんでしょう。
しかし子供もいることですし、「これからミュージシャンになる」という男に付いていくなんてリスキーなことはできず、最終的には男の気持ちを受け入れられなかったのでしょう。
ただ、結ばれなかったにもかかわらず、男は晴れやかな顔でロンドンへ旅立ちました。
男も大人ですし、ロンドンでは出ていってしまった彼女が待っていてくれることもあって、「良い思い出になる」と気持ちを昇華できたんでしょうね。
ピアノを受け取った女も、非常に穏やかな顔でダブリンにやってきた夫と暮らしていました。
こういうハッピーエンドもあるんだな、と感慨深かったですね。

3.名前の明かされない登場人物

あらすじを読んでおわかりかと思いますが、この映画では主要人物の名前が明かされません。
自分は初見の時、この意味がよくわかりませんでした。
登場人物には名前があった方がキャラクターが印象に残りますし、物語を進行する上でも名前を呼べた方が便利ですよね。
でもこの映画を見ていて、具体的に言うとカメラワークを見て、その理由がなんとなくわかったような気がしました。
この映画はキャラクターの恋愛を描いているのではなく、実際にダブリンの街角にいた二人の男女を切り取るような形で撮られたものなのです。
基本的に街での映像はかなり遠くから撮られています。しかも、街にいる人には映画の撮影をしていることを伝えていなかったそうです。
これには撮影上の理由(映画初主演の二人を緊張させないため等)もあるのですが、演技も街並みも非常に自然に見えるという効果を生んでいるんですね。
だからこそ、名も知らない実在の人物のドキュメンタリーを見ているような気がして、名前もわからないのに妙に親近感が湧き、心に残るのです。

■まとめ
とここまで色々語ってきましたが、やはりこの映画の一番の魅力は音楽です。
中でも一番「おお」と思ったのが、エンディングなんです。
エンディングの入りで、二人が最初に楽器屋でセッションをした音源が流れます。
これは普通にマイクで録音したものなので音質が悪いんですが、大サビに行くところでちゃんとレコーディングした音源に変わっていくんですね。
音が急激にステレオになってぶわーっと広がる感じが、二人の世界が広がっていくシーンにぴったりでもう素晴らしいんです。
機会があれば是非見て確認してほしいですね。

余談ですが、男役のグレン・ハンサードと女役のマルケタ・イルグロヴァは、撮影中に実際に恋愛関係に発展します。
今はもう別れてしまったのですが、その辺も考慮してみると本当ににやけますよ!

俺も女の子と即興セッションしたい! サラダバー!

映画「リターナー」あなたが一番影響を受けた作品はなんですか?

本日紹介する作品は映画「リターナー」です!

後に「ALWAYS 三丁目の夕日」や「永遠の0」で名をはせることになる山崎貴監督の映画ですね。
これは初監督作品「ジュブナイル」の次に撮られた二作品目。
日本のアクション映画としては未だに最高峰の作品だと思ってます。
ジュブナイルも今後紹介しようと思いますが、リターナーは自分が最も影響を受けた映画と言っても過言ではないので、先にこちらから紹介させてください。

物語曲線はこんな感じです。
リターナー曲線 
アクション映画なのでそこかしこに盛り上がるシーンがあり、クライマックスに向けて盛り上がっていく一般曲線のようなんですが、この曲線よーく見るとあの曲線の要素も含んでるんですよね。

では、あらすじをどうぞ!

※以下ネタバレが含まれます、ご注意ください。

■おおまかなあらすじ
2084年。地球はダグラと呼ばれる宇宙人の侵略を受けており、人類は激しい戦いの中で消耗しつつあった。
そんな戦争状態を抜本的に解決するため、ミリという少女が最初に地球へやってきたダグラを抹殺しに2002年へタイムトラベルする。

2002年。船上での闇取り引きを潰しに来た裏世界の仕事人ミヤモトは、仕事の最中にタイムスリップしてきたミリを撃ってしまう。(ダグラから身を守るための防弾プレートを仕込んでいたので無事だった)
仕方なくミリを連れて帰るミヤモト。
目を覚ましたミリは、ミヤモトに「(最初のダグラを探す)協力してほしい」と頼むが、ミヤモトは子供の冗談だと思って部屋から追い出してしまう。
それでもミリはめげずにミヤモトの部屋に侵入し、首に小型爆弾(に見せかけたビップエレキバン的なもの)を貼り、脅迫する形で協力の約束を取りつける。

お腹を空かせていたミリは、ミヤモトの作ったペペロンチーノを食べるとあっという間に眠ってしまう。
ミヤモトもベッドに横になるが、ミリが寝室に入ってきたことに気づいて起きる。
「コートが落ちてたから拾った」と言うミリにため息をつき、再び眠りにつくミヤモト。
翌朝起きると、床に一枚の写真と新聞記事の切り抜きが落ちていた。
写真には、雨の中倒れているミヤモトの姿が映っていた。

ミヤモトに仕事の依頼を出している謝という老婆の協力もあり、最初のダグラを発見する二人。
しかしそのダグラは、ミリが未来で戦っていたダグラとはまるで違う姿だった。
ダグラは幼い子供のようで、さらに弱っていた。

そこに現れたのが、溝口というマフィアの男。
溝口はミヤモトが中国にいた頃の親友の仇で、さらにダグラを軍事利用しようとしていた。
多勢に無勢だったため、一時その場から逃げ出す二人。

謝の助言から、「最初のダグラは迷子で、それを殺してしまったために本隊が攻め込んできた」という結論を導き出し、ダグラを助けに行くことにするミヤモトとミリ。
溝口とダグラのいるプラントに二人で乗り込み、辛くも溝口を倒してダグラを奪還、本隊に返すことに成功する。

ダグラの侵略は防がれたが、未来が変わったことによってミリは消えてしまう。

溝口を倒したことにより、闇の仕事から足を洗うことを決めたミヤモト。
謝に銃を返したあと、雨宿りをしながら一服していると、一人の男がミヤモトの前に現れる。
冒頭、船上での取り引きを潰した際に、足を撃って大怪我をさせた男だった。
男がミヤモトに銃を向ける。ミヤモトはすぐに応戦しようとするが、銃は謝に返してしまっていた。
雨の中鳴り響く銃声。ミヤモトはその場に倒れた。

雨の中倒れるその姿は、いつかミヤモトが見た写真の光景そのままだった。

しかし息を吹き返すミヤモト。
不思議に思いながら撃たれたところを触ると、そこにはミリが使っていた防弾プレートが。
ミリは一度未来に戻ったあと、ミヤモトが死んでしまうことを知って一度戻ってきていた。
その時コートを拾う振りをして、防弾プレートを仕込んでいたのだった。
防弾プレートの裏には「借りは返した」とのメモ。

雨が上がり、ミヤモトはその場を歩き去る。

■構造解析
長いですね!
やはり思い入れの強いものは気合が入ってしまいます……。
ではここから、いくつかの要素に分けて解析していきます。

1.ミステリー的な伏線回収

あらすじを読んでいただければおわかりかと思いますが、この映画もミステリー曲線を含んでます。
ミリが中盤に帰ってきていて、ミヤモトを救うために防弾プレートを仕込んでいたという部分ですね。
初見時は気づかなかったのですが、ミヤモトの寝室を訪れたミリはとても清潔そうに見えます。
しかし最初に2002年に来たミリは、戦争の最中やってきたので服もボロボロですし顔も真っ黒です。
大人が見たら気づけてしまうのかもしれませんが、これがミステリー的伏線回収の原体験の一つだったりするので、自分の心には印象的に残っています。
このように、どんなジャンルであっても「伏線」と「伏線回収」を仕込むと、ぐっと物語の魅力が強くなるでしょう。

2.既視感はあるが、日本ならではの映像美と物語

今作は「どこかで見たことがある」「マトリックス?」「E.T?」「ターミネーター?」など、とにかく既視感があるという評価を下す人が多々いました。
確かに影響を受けた部分はあると思いますし、自分も「マトリックスっぽいなー」と思いながら見ていたんですが、上記の作品とはやはり違うものです。
比較対象になるのがほぼすべて洋画ですよね。
洋画は確かにエンターテイメント性が強くて、物語のふくらみ方も大きく、映像も派手なものが多いです。
しかし今作は非常にコンパクトに物語がまとまっており、なおかつ派手過ぎず地味過ぎない日本人好みの(?)アクションシーンが多いのです。
物語はあらすじの通りとして、アクションシーンを比較してみましょう。

マトリックスのアクションシーンはご存知でしょうか?
主人公のネオとトリニティが、両手にマシンガンを持ってバカスカ撃ちまくるシーンがあります。スロー再生を多用し、石の柱が砕ける映像がとても派手でした。
のけ反って銃弾を避けるシーンも有名ですよね。
一方でリターナーも、似たようなシーンがあります。
作中にソニックムーバーと呼ばれるアイテムが登場します。数秒チャージすると、一定時間超高速で移動できるようになるというものです。
ソニックムーバー使用中は使用者以外がスローモーションになるため、よくマトリックスと比較されていました。
しかしアクション自体はただ銃を撃ちまくるだけでなく、銃弾を最小限の動きで回避、ハンドガン一丁で複数人を的確に撃ち抜く、マガジンを放り投げてソニックムーバーが切れる直前に再装填など、非常に現実的(?)でクールな立ち回りをします。
これはマトリックスにはない、日本的なアクションシーンでした。

■まとめ
今回の記事でなにが言いたかったかというと、日本のアクション映画にも良いものはあるぞということです!
昨今日本のアクション映画=はずれみたいな風潮や、「日本は予算がないからアクション映画でハリウッドに勝てない」と発言する映画関係者がいたりしますよね。
自分は全然そんなことはないと思います。
確かに世界に通用するかというと微妙かもしれませんが、工夫次第で少なくとも日本人の好みにあったアクション映画は作れるはずです。

というか、またリターナーのようなアクション映画が見たいんです!
このブログを万が一映画監督さんが見ていたら、10回は見るので撮ってくださいお願いします!

自分が一番影響を受けた作品と言ってもいい作品だったので、つい熱くなってしまいました( ˘ω˘)
皆さんにとっての「一番影響を受けた作品」があればコメントで教えてくれると嬉しいです!

それでは、サラダバー!

映画「舟を編む」時間が経過するということの〇〇さ

本日紹介するのは、映画「舟を編む」です!
原作は三浦しをんさんの小説で、今期アニメもやってますね。

この盛り上がり曲線をご覧ください!
舟を編む曲線 
ザ・一般小説曲線ですね!
今作はミステリー的なギミックもなく、構造もとてもシンプルなのですが、ある特徴があります。
それが良い物語を作る上で効果的なものだったので、今回あえて解析しようと思います。
まずはあらすじをご覧ください!


※以下ネタバレが含まれます、ご注意ください。


■おおまかなあらすじ
出版社に勤める馬締(まじめ)は、ひょんなことから辞書編集部へと異動することになる。
元々大学で言語学を専攻していたりと、言葉が好きだった馬締にとって、辞書編集部の仕事はやりがいのあるものだった。
辞書の監修を務める国語学者の松本に好奇心を刺激されたり、同い年の西岡と触れ合うことでコミュニケーシを円滑に行えるようになったりと、充実した日々を送る。

そんな馬締の下宿先に現れたのが、大家のタケの孫娘、林香具矢。
板前の修業をしている彼女に、馬締は一目惚れしてしまう。
馬締は恋文を渡すという真っ向勝負に出るが、あまりに達筆過ぎて香具矢には読めず怒られるも、結果的に恋仲に。

その後数年間、香具矢に支えられながら辞書制作に取り組む馬締。
仲良くなった西岡の異動や、大家タケの死。歳月の流れを感じさせる出来事にもめげず、馬締は辞書制作に心血を注ぎ続けた。
そして完成間近の編集作業中、「単語が一つ抜ける」という問題が発生する。
馬締は妥協することなく、もう一度すべての単語をチェックすると宣言し、徹夜で作業を続けた。

そして辞書の完成目前。
体調を崩していた松本が亡くなってしまう。
「間に合わなかったよ」と涙する馬締に、香具矢は寄り添った。

完成した辞書「大渡海」の祝賀パーティーには、松本の写真が飾られていた。

■構造解析
この物語の特徴はずばり時間経過です。
「時間経過は特徴的と言える要素なのか?」と思う方もいるでしょう。
本筋が終わったあとに「数年後」みたい感じで後日談が描かれるのは映画ではよく見る演出ですしね。
ただ、今作の場合は物語の中盤で一気に12年もの時が流れます。これは後日談とは全く違う効果のある演出です。
後日談の場合「あんなこともあったな、良かったな」みたいな描かれ方をしますよね。
一方中盤に12年もの時間が流れてしまうと、ただただ残酷なんです。
お世話になった大家さんや、あらすじには書きませんでしたがトラさんという可愛がっていた猫も馬締は亡くしています。
それでもひたすら12年間、ぼろぼろになりながらも辞書制作に打ち込み続ける馬締。
最終的に辞書の完成前に松本まで亡くし……人によっては立ち直れないほど落ち込みそうですよね。

しかし祝賀パーティーに出席する馬締は、自分の目にはどこか吹っ切れたように見えました。
その表情が、馬締の成長を如実に表現しているのです。
これは松田龍平さんの演技の素晴らしさもあるのですが、非常に日本人的で素晴らしい演出でした。
見ている人も「悲しいこともあるけれど、これが人生だよなぁ」としみじみ思えるわけですね。

■まとめ
というわけで今回は時間の経過に焦点を当ててみましたが、本当にシンプルに良い話ですよね。
胸糞悪くなるような悪人も出てこないので、見終わったあとの「良い映画だった感」がとても強かったです。
今作は日本アカデミー賞他様々な賞を受賞しています。
ミステリー的なギミックもとても面白いですが、沢山の人の心に響くのはやはりこういう話なのでしょう。

もし書いている小説に停滞感があるなと思ったら、一気に年月を進めてしまうのもいいかもですね。

さて、映画にならって今日はシンプルにこの辺で! サラダバー!

スポンサーリンク

検索フォーム

プロフィール

志室幸太郎

Author:志室幸太郎
あの名作からなんてことないニュースまで、ストーリー性のあるものを構造解析していきます。
創作ライフのお役に立てれば幸いです。

シェアワールド企画“コロンシリーズ”を運営しています。
コロンシリーズ:ホームページ
ツイッター:@shimuro_1129s

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

QRコード

QR

リンク

プライバシーポリシー