小説「君の名は。」とシン・ゴジラの共通点

さて、本日紹介する作品は小説「君の名は。」です。
映画の興行収入が200億円を突破し、海外でも大好評とのことで、日本を代表するアニメ映画の一つになったのではないでしょうか。
ところがどっこい、自分は見に行けておりません()
決して「けっ、流行りになんか乗るもんか」的なアレではなく、単純に「アラサーのおっさんが一人で見に行くのは恥ずかしくないだろうか」というもっとしょうもない理由です。
しかし内容は気になったため、小説を読みましたのでこっちのレビューをさせていただきます!

盛り上がり曲線はこんな感じです。
君の名は曲線 
若干緩めのミステリー曲線ですね。これが大ヒットの決定的原因となったようです。
この手法、種類は違えど、実は“シン・ゴジラと同じ性質を持っているんですね。
ではあらすじを読みつつ、キャラクターの魅力や需要の捉え方、さらにはプロモーションの方法も含めて解析していきましょう。


※以下ネタバレが含まれます、ご注意ください。


■おおまかなあらすじ
糸守町に住む東京に憧れる女子高生“宮水三葉”と、東京に住む男子高校生“立花瀧”。
二人はなぜか、夢の中で心と体が入れ替わってしまう。
戸惑いながらも、二人は日記アプリを使ってコミュニケーションを取りながら、それぞれの生活を乗り切っていた。

しかしある時、突然入れ替わりが起こらなくなってしまう。

町の名前が思い出せない瀧は、記憶の中の風景を絵にして、それを頼りに三葉の住んでいる場所を探し始めた。
バイト先の先輩や友人も巻き込んで電車で出かけるが、見つからない。
諦めかけた一行がラーメン屋に入ると、絵を見た店主が「それ昔のイトモリやろ?」と言う。
それをきっかけに「糸守町」という地名を思い出す瀧だったが、そこで衝撃的な事実が告げられる。

糸守町は三年前に彗星の落下によって消滅してしまっていた。

市立図書館で記録を調べると、犠牲者名簿の中には三葉の名前が。
瀧は、三年前の三葉と時を超えて入れ替わっていたのだった。

瀧はもう一度三葉と入れ替わり、彗星が落下することを知らせるため、ある場所に向かう。

■構造解析
すいません、物語の全容を書いているとあらすじだけでとんでもない長さになりそうだったので、今回は若干割愛させていただきます!
是非映画か小説でお確かめください。
ただ、物語の構造を説明する分にはこれで充分です。

1.叙述トリックの妙
本作はミステリー小説の王道であり必殺技、“叙述トリック”が使われています。
中でも特に強いカタルシスを与えることができる「違う時代に生きる二人のキャラクターを同じ時代にいるかのように描く」というものです。
ミステリーを読みなれている人であればなんてことはないこの手法ですが、他にも多少ファンタジーな設定が混在しており、一般の人たちは若干難しく感じてしまいます。
これがヒットの原因でした。
「一度目ではよくわからなかったから、もう一回見に行った」という人が多数存在していたのです。
「シン・ゴジラ」も手法は違うものの「残った謎を確認するためにもう一度見た」という人を生む作り方をしていました。
映画にとって“リピーターがつく”というのは最高の結果ですから、どちらも成功したわけですね。
ただし、この手法はある意味賭けです。
あまりにもわかりづらくしてしまえば「よくわからなかった」で終わってしまいますし、かと言ってわかりやす過ぎれば「二回目はいいや」となってしまいます。
「君の名は。」も「シン・ゴジラ」もその辺のバランス感覚が素晴らしく、やはりプロは凄いなと思いました……。

ちょっと叙述トリックについても掘り下げます。
自分が上手いなと思ったのは、二人の時代がさほど離れていないという点です。
瀧も三葉もスマートフォンを使ってコミュニケーションをしており、東京と田舎の差もあって、“時代が違う”ということに気づき難くなっているんですね。
この叙述トリックを使う時は、大抵何十年か時代を離すことが多いです。
その方がネタバレした時の驚きが大きいからなんですが、一方で時代が違うということを気づかせないために、キャラクターの行動や描写を制限しなければいけなくなるのです。
それが逆に「時代が違うことを隠そうとしているな」と気づかせてしまったりすることも。
本作の場合、単純に瀧と三葉を会わせてハッピーエンドにするという結末ありきで構成された物語だからだとは思うのですが、上記のようにミステリー的にも良い効果があったりしました。

2.時代に寄り添った設定とキャラクター
とは言え、やはり需要もしっかりと意識した作りになっています。

・若い世代に最も好まれるキャラクターである高校生の男女
・異性を意識させる男女の入れ替わり
・彗星が鍵になるというドラマチックなシチュエーション
・日本特有の文化に根差した各種設定
・運命の人と再び出会うという恋愛要素

誰からも好かれるであろう、まさに映画界の新垣結衣的スペック。
加えて、映画に関しては新海誠監督作品の売りである素晴らしい映像美とRADWIMPSの10~20代が好む音楽。
ヒットしなかったら逆におかしいのです。

3.売れる要素盛り沢山だからこそのプロモーション
そして売れる要素がてんこ盛りだからこそ、プロモーションで出す情報を絞ることができるのも良かったのでしょう。
事前情報で核心部分を出さないのは当然なのですが、本作の場合「男子高校生と女子高校生が入れ替わる」ということ以外一切不明だったので、彗星落下や時間の隔たり等の隠された大きな要素に「こんな話だとは思わなかった」と驚いた人も多かったようです。
前前前世以外のRADWIMPSの音楽も効果的に使われていたようですね。
この点は映画「告白」のプロデューサーが関わっているのでしょう。
(映画「告白」も音楽の使い方が良く、とても好きなのでそのうち記事にします)

■まとめ
全体を通して、この映画に関わった方々の手腕に脱帽です。
「この世界の片隅に」も話題になっていますし、2016年は本当に映画界にとって大きな収穫があった年だったのではないでしょうか。
ツイッター等のSNSが普及したことで、本当に良いものが評価される時代になりつつあるようですね。
この勢いで映画業界が再び元気になってくれることを願います。

ただし実写化、てめーはダメだ。

それでは、さらだばー!

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志室幸太郎

Author:志室幸太郎
あの名作からなんてことないニュースまで、ストーリー性のあるものを構造解析していきます。
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