「辛い記憶を消す技術」あなたには消したい記憶がありますか?

本日紹介するのは「辛い記憶を消す技術」のニュースです。

情報通信研究機構(NICT)が、辛い記憶を無意識に消去できる技術を開発したと発表しました。
報酬系を利用しながら脳活動をコントロールする訓練をすることで、不快な記憶をポジティブなイメージに置き換えるというもの。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療に繋がる可能性があるとして、今後さらに研究が進められていくようです。

これに関して、ツイッターでちょっとしたアンケートをしてみました。
ご協力してくださった方、ありがとうございます!
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このように、忘れたい記憶がある人はかなり多いようですね。
しかし、本当に忘れてしまっていいのでしょうか?
思うことがあったので、ちょっとした短編小説を交えて解析してみましょう。

■短編「エイサちゃんとニクト博士」
 交通事故で両親を失ったエイサは、保護施設のベッドで一人震えていた。
 事故から数週間が経っても、前の座席で血を流して動かなくなった両親の姿が頭から離れなかった。
 様々な心理的ケアを試みるものの、どれも効果は薄く、エイサの心は疲弊していった。
 そんなある日のことだった。

「こんにちは、エイサちゃん」

 でっぷりと太ったマスコットキャラクターのような精神科医が、一人の男を連れて部屋に入ってきた。
 男はパーティーグッズとしてお馴染みの鼻眼鏡をしていた。

「ハーイ」

 鼻眼鏡の男が元気にそう言って手を挙げる。エイサは困惑した。

「え、えっとね……。この人は人間の記憶について研究している、ニクト博士」
「ハーイ」
「あ、すいませんちょっと説明するので……」
「アッハイ」
「ふっ……」

 事故後、エイサが笑ったのはそれが初めてのことだった。
 担当していた精神科医が驚いた様子を見せる。

「おー、いいですねー。やっぱり女の子は笑顔が素敵。飴ちゃんをあげよう」

 ニクトはエイサに飴玉を渡し、ピエロのような大仰な動きでお辞儀をした。

「先生、あとはこのスーパー天才博士ニクトにお任せを」
「あ、はあ……。エイサちゃん、怪しい人じゃないからね。一応ちゃんとした研究機関に所属してる人だから、心配いらないからね」

 そう言い残して、精神科医は心配そうにニクトとエイサをチラ見しながら部屋を出ていった。

「ハーイ、エイサちゃん」
「は、はーい……」
「うーん、もっと大きな声で!」
「は、はー! い……」
「グッド! 飴ちゃんをあげよう」

 まだ最初にもらった飴を舐め始めてもいないのに、エイサの手に二つ目の飴が置かれた。
 エイサはしばらくその飴を見つめて、つぶやく。

「……これで私の報酬系をコントロールするの?」
「Oh……君も天才だったか」

 ニクトは鼻眼鏡を外す。予想に反した端正な顔立ちに、エイサは一瞬見惚れてしまった。

「人は面白いものを見て笑う時、不安に思っていることを忘れている。だから君が笑う度に報酬を与えて、忘れることが良いことだと関連づける治療をするつもりだった。でも君には効果がないかもしれないね」

 そう言って、ニクトは困ったように笑った。

「はい」

 エイサはもらった飴の一つをニクトに差し出す。
 ニクトは「ありがとう」と礼を言って、遠慮なく飴を口に放り込んだ。エイサも同じようにした。

「座ってもいい?」
「うん」

 ニクトはベッドに腰かけ、腕を組んで唸り始めた。

「困ったなぁ、どうしようかなぁ」
「ふふ……ありがとう。でもいいの」

 それを聞いて、ニクトははっとした。

「そうか。君は忘れたくなくて苦しんでいるんだね」

 エイサは飴を口の中で転がしながら頷く。

「思い出すと辛いから、忘れたいの。だけど忘れたら、パパとママのことまで忘れちゃいそう。……パパとママのこと、忘れたくない」
「なるほどだね。それなら君の心を鍛える方向でいこう」
「心を鍛える?」
「辛い思い出を抱えきれない人は、忘れた方がいいこともある。だけど、辛い思い出を抱えていけるように心を強くすることもできる。それは君の将来にとても役立つだろう。大変だけど、君は耐えられるかな?」

 エイサは飴をかみ砕き、力強く頷いた。

「偉いね。飴ちゃんをあげよう」

 ニクトは舐めていた飴を口から取り出し、満面の笑みで差し出した。

「それはいらないです」

■まとめ
確かにPTSDのように、その辛い記憶によって日常生活に支障が出る場合は記憶を消去すべきなのかもしれません。
しかしもしもその辛い記憶を背負っていける覚悟があるのであれば、忘れない方が良いと自分は思います。
というのも、辛い記憶は人間にとって、ひいては生物にとって必要なものです。

幼い頃階段を駆け下りようとして転げ落ちた記憶がある人は、階段を慎重に下ります。
車を運転して事故を起こしてしまった人は、慎重に車を運転しようと思います。
夜道で暴漢に襲われた人は、決して夜道を一人で歩くようなことはしないでしょう。
辛い記憶は、生きていく上で危険回避のために必要な情報です。

もし辛い記憶を忘れれば、一時的には楽になるかもしれませんが、再度同じ辛い目に合う可能性も高まってしまうのではないでしょうか。

自分にも忘れたい黒歴史がそれはもう沢山ありますが、今後同じようなことを繰り返さないためにも背負っていきたいと思います墓まで( ˘ω˘)

それでは今日はこの辺で! サラダバッ!

コメント

辛い記憶を消したい。誰でも思うことでしょう。しかし私はある作品から、それは良いことではないということを学びました。
その作品では「忘れられてしまった登場人物」として哀しみが現れます。忘れられてしまった哀しみは、その寂しさから主人公に助けを求める。
そして作品内でこのようなセリフがありました。
「哀しみを忘れてしまったら喜びがわからなくなる」と。
感情の上で全ての事象は対極を成しています。不幸と感じるのは今までが幸せだったから。幸せを感じるのは今までが不幸せだったら。

良き記憶を、良き記憶として思いだすために必要なのが辛い記憶なのではないのでしょうか。
もし辛い記憶が消えた場合残るのは本当に、良い記憶と言えるのでしょうか。

長文失礼しました。

No title

なるほど、そのアプローチまでは思い至れませんでした……。
確かに幸も不幸も相対的なものですよね。
基準となる値として、どんな記憶でも大切なものですね。

とはいえ中には本当に辛い記憶に苦しんでいる人もいると思うので、そういう人を救うためにもこの技術は発展してほしいですね……。

深いコメントありがとうございました!
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志室幸太郎

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あの名作からなんてことないニュースまで、ストーリー性のあるものを構造解析していきます。
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