小説「そして誰もいなくなった」はなぜ名作なのか

最初に解析する作品は、アガサ・クリスティーの名作「そして誰もいなくなった」です。
この作品を知らない人でも、「そして誰もいなくなった」というワードはご存知なのではないでしょうか?
それくらいインパクトがあり、人を惹きつける素晴らしいタイトルですよね。

まずは盛り上がり曲線をご覧ください。
0003そして誰もいなくなった曲線 
不思議に思った方も多いはずです。
ミステリー小説でありながら、ぱっと見た形は一般小説曲線っぽいですよね。
そこにこの小説の凄さが隠されているんです。

非常に面白い小説ですので、できれば一度本編に目を通してからこの解析を読むことをおすすめします。
「手っ取り早くノウハウだけが欲しいんだよ!」という方は下へどうぞ!



※以下ネタバレが含まれます、ご注意ください。



■おおまかなあらすじ
物語は、「U.N.オーエン」という人物が、10人の客人を自分の島の館に招くところから始まります。
この「10人」というところが大きなポイントになってます。
島に到着した10人は、10人のインディアンが1人ずついなくなっていく童謡に合わせて殺されていきます。

■構造解析
まず最初の殺人で曲線が少し上昇しますね。これは基本ミステリー曲線と同じです。
そしてもう一つ、ミステリー曲線にはまだ紹介していない特徴があります。
それは微震です。小刻みに線が振れているのがわかると思います。
これは「次の殺人がいつ起こってしまうんだろう」という、読者の不安を表現したものです。
読者の不安を煽ることで、「この事態を早く解決して安心したい」という心理を生み、ページをめくらせることができます。

ミステリー小説を読んでいて、最初の殺人のあと地味な捜査が続き、飽きてしまったことはありませんか?
その手法の場合、低空飛行した分クライマックスの上昇幅は大きくなるのですが、それ以前に苦手意識が生まれてしまう読者もいます。

しかしこの作品は、最初から最後まで「次に誰が殺されるのか、止められるのか」という緊張感があるおかげで、文字通り「読み始めたら止まらない」を実現しているのです。
一般小説曲線の全編を通しての盛り上がりと、ミステリー小説のギミック。双方の良いとこ取りに成功しているわけですね。

では同じように「作品の序盤から終盤まで、読者を不安にさせるシチュエーション」を用意すればいいのかと言われると、そうとも限りません。
ただそのシチュエーションを用意し、キャラクターを動かしているだけでは、盛り上がり曲線は下降気味になってしまうでしょう。

それをさせないために必要なのが、読者を飽きさせないための「テコ入れ」です。
先ほど「10人」がポイントになると言った理由がこれですね。
この作品は被害者が「10人」いることで、作中で「10回」のテコ入れができるわけです。
次々と起こる殺人と、疑心暗鬼になる登場人物たち。読者であるこちらすらも、誰もが怪しく見えてしまいます。
「不安を煽るシチュエーション」と「十回のテコ入れ」を同時に実現するこのプロットこそ、著名な作家からも名作と言われる所以なのです。

ちなみにミステリー的なギミックですが、「途中で犯人が自分を死んだように見せかけ、姿を隠して殺人を続行する」という、今ではよくあるギミックでした。
これを聞いて拍子抜けしてしまう人もいるかもしれませんが、ギミックだけがこの小説の魅力ではないことはもうおわかりですよね。

■まとめ
結論としては、

「序盤から終盤まで不安を煽るシチュエーション」


「シチュエーションに合った自然なテコ入れ」

を同時に実現するプロットを書ければ、余程文章が酷くない限り名作になるかもしれません。
ただし、現代の消費者は娯楽によるストレスを嫌がる傾向もあるので、諸刃の剣であることも覚えておきましょう。

以上、「そして誰もいなくなった」の解析情報でした。

それでは、今日はこの辺で!
異論や賛同のコメントはお気軽にどうぞ! サラダバー!

コメント

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Re: 面白いです。

コメントありがとうございます!
ちゃんとテーマを決めてブログを始めるのは初だったので、早速反応をいただけてとても嬉しいです笑
本格的にミステリーを読んでいらっしゃるんですね……。
自分は名作を幅広くつまんでいる、いわばにわかなので、もし見当違いなことを言っていたら遠慮なく指摘してくださいね!
更新頑張ります!
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