映画「Once ダブリンの街角で」クリスマスということで恋愛映画でも!

本日紹介する作品は映画「Once ダブリンの街角で」です!

「え、なにそれ?」と思われる方もいるかもしれませんね。
あまり大々的に宣伝されなかったので、知らない方も多いと思います。
とりあえずPVをご覧ください。


アイルランドで極めて低予算で制作された映画にも関わらず、アメリカや日本にも配給され、その楽曲はアカデミー賞を受賞したりグラミー賞にノミネートされたりしました。
そう、この映画はほぼ音楽映画です。とにかく挿入歌が素晴らしい。
ですが当然ストーリーにも魅力がありますので、解析してみましょう。


※以下ネタバレが含まれます、ご注意ください。


■おおまかなあらすじ
アイルランドの首都ダブリンで、ストリートミュージシャンとして活動する30代の“男”。
熱い歌とギターを披露するも、足を止めてくれる人は少なかった。
そんなある日、チェコからやってきた花売りの“女”が男の歌に興味を示し、話しかけてきた。
男が実家の掃除機修理の仕事を手伝っていることを知ると、壊れた掃除機を見て欲しいと頼み込む。

次の日、女は掃除機をそのまま引きずって街を歩いてきた。
軽く食事をしながら会話をする二人。女は自身もピアノや歌をやっていることを明かす。
それを聞いた男は一緒に楽器屋に行き、女と一緒に即興でのセッションをする。
男が「レコーディングを手伝ってくれないか」と頼むと、女はそれを快諾した。

その後、男は長年交際していた彼女が出ていってしまったこと、女は夫と別居していることをお互いに知り、親密になっていく。
男の父親のバイクで海を見に行った時、男が「夫を愛しているか」と聞くと、女はチェコ語でなにかを言った。
男はなんと言ったのかたずねたが、女ははにかんで答えなかった。

男と女、さらに3人のストリートミュージシャンを加えて、スタジオでのレコーディングが始まる。
当初は寄せ集めのバンドにいまいち乗り気でないスタッフだったが、その素晴らしい演奏に態度を一変、やる気を見せ始める。
一晩中続いたレコーディングが終わり、カーステレオでの音質チェックを兼ねて海へ行く一同。
デモテープが完成し、男が女を家まで送ると、女は「別居していた夫がダブリンに来て同居することになった」と告げる。
男はロンドンに行くことを決めていたため、「最後の夜は一緒に過ごしたい」と言う。
女は「なにか間違いが起きてしまうかもしれない」と言って一度断るも、最終的には受け入れた。

しかし女はその約束をすっぽかしてしまう。
男は出発の前に女を探すが、見つけることができなかった。

空港に行く前に、男は女のためにチェコ製のピアノを購入し、女の家に届けるよう伝える。
男はロンドンへ出発し、二人は別々の道を歩むことになる。

■構造解析
どうですこのほろ苦い話……。
とても濃い時間を過ごした二人ですが、最終的に結ばれることはないんですね。
特に大きな山場のないストーリーではあるのですが、非常に印象的な演出がされているのでいくつか紹介します。

1.シュールな冒頭でのつかみ

自分は当初、この映画を甘ったるい恋愛映画だろうと予想して見始めました。
しかし冒頭、ストリートミュージシャンの男が投げ銭の入ったギターケースを盗まれて全力疾走で追いかけるシーンや、女が掃除機をゴロゴロ引きずりながら街を歩くシーンでかなり笑いました。
やはり“笑える”というのは重要な要素で、「まあまあそんなに緊張しないで、気軽に見てってよ」という作品に対する無駄に肩に力の入った先入観を解きほぐす効果があるのでしょう。

2.女がチェコ語で言った言葉

劇中で女が男にチェコ語で言った言葉。
後に調べてわかったのですが、「夫を愛しているか」という質問に対して「あなたを愛している」と言っているのです。
複雑ですよね……多分気持ちとしては、男を好きになっていたんでしょう。
しかし子供もいることですし、「これからミュージシャンになる」という男に付いていくなんてリスキーなことはできず、最終的には男の気持ちを受け入れられなかったのでしょう。
ただ、結ばれなかったにもかかわらず、男は晴れやかな顔でロンドンへ旅立ちました。
男も大人ですし、ロンドンでは出ていってしまった彼女が待っていてくれることもあって、「良い思い出になる」と気持ちを昇華できたんでしょうね。
ピアノを受け取った女も、非常に穏やかな顔でダブリンにやってきた夫と暮らしていました。
こういうハッピーエンドもあるんだな、と感慨深かったですね。

3.名前の明かされない登場人物

あらすじを読んでおわかりかと思いますが、この映画では主要人物の名前が明かされません。
自分は初見の時、この意味がよくわかりませんでした。
登場人物には名前があった方がキャラクターが印象に残りますし、物語を進行する上でも名前を呼べた方が便利ですよね。
でもこの映画を見ていて、具体的に言うとカメラワークを見て、その理由がなんとなくわかったような気がしました。
この映画はキャラクターの恋愛を描いているのではなく、実際にダブリンの街角にいた二人の男女を切り取るような形で撮られたものなのです。
基本的に街での映像はかなり遠くから撮られています。しかも、街にいる人には映画の撮影をしていることを伝えていなかったそうです。
これには撮影上の理由(映画初主演の二人を緊張させないため等)もあるのですが、演技も街並みも非常に自然に見えるという効果を生んでいるんですね。
だからこそ、名も知らない実在の人物のドキュメンタリーを見ているような気がして、名前もわからないのに妙に親近感が湧き、心に残るのです。

■まとめ
とここまで色々語ってきましたが、やはりこの映画の一番の魅力は音楽です。
中でも一番「おお」と思ったのが、エンディングなんです。
エンディングの入りで、二人が最初に楽器屋でセッションをした音源が流れます。
これは普通にマイクで録音したものなので音質が悪いんですが、大サビに行くところでちゃんとレコーディングした音源に変わっていくんですね。
音が急激にステレオになってぶわーっと広がる感じが、二人の世界が広がっていくシーンにぴったりでもう素晴らしいんです。
機会があれば是非見て確認してほしいですね。

余談ですが、男役のグレン・ハンサードと女役のマルケタ・イルグロヴァは、撮影中に実際に恋愛関係に発展します。
今はもう別れてしまったのですが、その辺も考慮してみると本当ににやけますよ!

俺も女の子と即興セッションしたい! サラダバー!

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