映画「SAW」に学ぶ物語の「層」

さて、本日紹介する作品は映画「SAW」です。
低予算ながら、後に全7作まで制作されるほどヒットしました。
よく「ホラー映画」や「サイコスリラー」として紹介されますが、その無駄のないプロットは「そして誰もいなくなった」に匹敵するほどの良質なミステリーです。

盛り上がり曲線はこんな感じです。
0004SAW曲線 
基本ミステリー曲線と同じような低空飛行ですが、その鬼気迫る演出や役者さんの演技から、かなり強く震えてますね。
そしてクライマックスの急上昇っぷり。まだ見ていない方は、すぐにレンタルかDVD・ブルーレイを買って見てくることをおすすめします。
個人的に記憶を消してもう一度見たい映画筆頭です。


※以下ネタバレが含まれます、ご注意ください。


■おおまかなあらすじ
密室に閉じ込められた男が二人。アダムとゴードンと言います。
二人はそれぞれ部屋の角、対角線上に鎖で足を固定されており、協力して拘束具を破壊するようなことはできない状態です。
そして二人の間――部屋の中央には、右手に銃を持ち、血を流した一体の死体。
静かな盛り上がりではありますが、人によってはこの謎に満ちたシチュエーションに惹きつけられるでしょう。
(余談ですが、こうして二人の行動を思いっきり縛ることで、低予算でできる+緊張感を生むという効果が出るのも凄いですよね)

その後二人は、ジグソウと呼ばれる猟奇殺人鬼にゲームを挑まれます。
ルールは「制限時間内に相手を殺すか、自分が死ぬかすれば、片方だけは助ける」というもの。
室内には“ジグソウからの指示が入ったカセット”と、一発の弾丸や煙草、受信用の携帯電話、ノコギリ(チープなもので、鎖を切れるほどのものではない)などが用意されています。
(これらのアイテムも、視聴者の「これからなにが起こるのか、これをどう使うのか」という想像を掻き立てる良いエッセンスになっています)

その後、二人はどういう行動を取るか様々な心理的戦いを迫られます。
犯人からの電話によって次第に明かされていく現状と、人質に取られたゴードンの家族など、平行して起こる事件によって決して途中で飽きることはないでしょう。
(ただ、次々に人が死んだりするわけではないので、若干低空飛行にはなります。しかしそれすら、衝撃の結末への伏線なのではないかと思えるほどなんです)

最終的にタイムリミットになり、家族を人質に取られたゴードンが「自分の足をノコギリで切断し、鎖から解放される」という凄まじい選択をします。
そして死体が持っていた銃を取り、アダムを撃ちました。
そこに、時間切れを告げに犯人がやってきます。間に合わなかったわけです。
ところがここで、撃たれたはずのアダムが起き上がり、犯人をトイレの貯水タンクの蓋で殴り殺します。
ゴードンはアダムの肩を狙って撃ち、致命傷を与えないようにしていたのです。

ゴードンの機転によって犯人を倒した二人。
自由になったゴードンが「助けを呼んでくる」と言って部屋を脱出します。
残されたアダムは、犯人の持ち物を物色します。
アダムが見つけたのは、“ジグソウからの指示が入ったカセット”
そう、犯人だと思っていた男も、ジグソウによって脅され、実行犯として動いていた被害者の一人でした。

そして、混乱するアダムの前で、部屋の中央に倒れていた死体だと思っていた男がむくりと起き上がるのです。
(このシーンはカメラワークも含め、本当にぞっとしました。必見です)

その男こそ、連続殺人鬼ジグソウでした。

文章で書いてしまうと「ふーん」という感じかもしれませんが、ここまで読んでしまった未見の人も、やはり一度は見るべきだと思います。
まだ紹介していない要素が沢山あります。

■構造解析
この話の構造は、図にするとこうなります。
SAW構造 
三層構造になっているのがわかるでしょうか。
面白い話を作るための有効な手法として、物語に「層」を作ることが挙げられます。
オカルティック・ナインの記事にも層の話はちらっと出しましたね。

ブルー層

まず冒頭、アダムとゴードンの層からスタートします。
この層の中心には感情移入させたいキャラクターを配置し、受け手の入口の役割を持たせています。
(本編はジグソウの説明から入りますが、猟奇的なシーンを見せつつジグソウを紹介しているだけなので割愛)

・ブラック層

そして中盤、実行犯の行動が見えてくることで、ブラック層にシフトします。
この層の中心には実行犯が配置されています。
普通の話の場合、この二層目に話のオチを持ってくることがほとんどです。
そのためほとんどの視聴者が、二人が実行犯を倒した時点で「これで自体は解決した」と安心してしまいます。

レッド層

そこに叩きつけられるレッド層。
中心人物はもちろんジグソウですね(層だけに)
登場人物はもちろん、視聴者もびっくり仰天です。
視聴者に提示された情報に誤り(実は死んでなかった)があったり、緊張状態だったとはいえ、ゴードン(医者)はそんなに長い時間死んだふりを見破れなかったのか?
という疑問すら吹き飛んでしまいます。

このように、それぞれの層にメインとなる登場人物を配置し、それぞれの思惑で動かします。
これを内側の層から外側の層に向かって明かしていくと、受け手はカタルシスを得られるのです。

■まとめ
というわけで今日の結論としては、

「層構造の話は面白い!」

ですね。
SAWでは「緊張」「解決」「絶望」という三層構造が使われていましたが、単語を入れ替えたり要素を変えたりすれば自作にも応用できるでしょう。
その場合、ハッピーエンドであれバッドエンドであれ、二層と三層の高低差をつけるとよりインパクトが生まれます。

ただし!

ただ層を作るだけではいけません。本当に重要なのは、実は「いかにスムーズに層をシフトするか」なのです。
もし流れもなく層をシフトしてしまうと、
ピンチだ!→私がボスだ!→実は私が黒幕だ!
という単純な話に見えてしまうからです。

つまり、結局は書き手の文章力・演出力次第になってしまうわけですね\(^o^)/
その辺の解説は、プロや専門家の方が本とかにしていると思いますのでそちらをご覧ください。(自分も知りたい)

それでは、今日はこの辺で!
異論や賛同のコメントはお気軽にどうぞ! サラダバー!

コメント

No title

ブログ始めたんですね。
こういうのは、如何に自分の日常の一部にしてしまえるかみたいな所が大切だと思うので
頑張り過ぎない程度に自由にまったり頑張って欲しいです


物語の曲線って言えばシンデレラ曲線って単語を思い出します
この題材でやるなら、桃太郎とかシンデレラみたいな名作古典の物語曲線みたいなのを解析したら面白いかも

あと、このブログでやる事なのかどうかは分からないですけど
コロンシリーズの参加作品自体にもやんわりと触れてあげたり
年末コロンシリーズ大賞みたいな企画を勝手にやったりして、評価の場所みたいなのを作ったりしたら面白いかもとかも思う
(別にやらなくてもいいけど)

No title

おお、忘れずに時々反応くれてありがとうございます!
なんだかんだ楽しんで書いてますよ!

古典の解析面白そうですね!
ネタはあればあるほど助かるのでありがたいです…

そうですね、ある程度アクセスが増えてきたら、コロンシリーズの企画の意図なんかも説明したいと思ってます!
コンテストもやりたいと思ってるんですよね…
BBSなんかにも書いたんですが、2017年中にお知らせできるように頑張ります!

これからも良かったら影で見守っててください(`・ω・´)b
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